通学合宿の意義と目的を考えてみた|福岡県で経験した子を持つ親の立場から

  • URLをコピーしました!

本日の内容は、「通学合宿」について。

「通学合宿」というものが子供の小学校では実施されますが、みなさん知っていますか?

全国的に実施されているわけではないので「何それ?」という人もいると思います(私自身、子どもが参加するまで知りませんでした)。簡単に言うと、通学合宿は

小学校の子供達(おもに高学年)が1週間程度、親元を離れて生活すること

です。私は福岡県在住ですが、通学合宿を行っている小学校はわりと存在し、小6の我が子も、5年生と6年生で2回参加しました。

ということで、通学合宿とは何なのか?

・目的と意義
・気になる事
・今後に向けて想うこと

について我が子の小学校の事例をまじえてお伝えします。

・通学合宿とは?どんな事をするの?
・意義や目的は?
・経験した子を持つ親の一意見が知りたい

という人向けの記事になっています。

目次

通学合宿とは、一体どんなもの?

まず、「通学合宿」とは何?について。

 通学合宿とは、地域の異年齢の子どもたちが、1週間程度の期間、公民館等に. 寝泊まりし、炊事や掃除、身の回りのことを自分たちで行いながら平常日に通学. する体験活動である。子どもたちに、炊事、洗濯、買い物などを経験させたり、地域の人々の協力のもと、もらい湯などの生活体験を行わせたりするなど、集団生活、地域との交流活動を通して、人間関係力や生活力を育むことがねらいである。この事業に多く住民が関わってもらうことを通して、子どもを核としたぬくもりある地域コミュニティの再生を図ることも目的としている。

引用:長崎県庁HP「通学合宿とは

整理すると、

  • 1週間程度、地域の公民館などに寝泊まりする
  • 家には帰らないでそこから通学する
  • 掃除や炊事など、身の回りのことを自分たちで行う
  • 地域の人たちの協力のもと行われる
  • 子どもを中心とした地域コミュニティの再生を図る

(他の地域は分かりませんが)私の地区の場合、期間中はできるだけ親とは接触しないがルールです。

なので、着替えや忘れ物など必要なモノは、子供たちが学校に行っている時間帯を狙って届けるよう指示があります。(正確には子供1人1人の専用ボックスがあり、そこで洗濯物のやり取りをしたりします。)

ところで1週間って、けっこう長いですよね。

1週間もの間、慣れない環境での友達や地域の人たちとの集団生活。(我が子のように)活発で物怖じしない子は平気かもですが、「繊細な子にとってはかなり試練⁉」と思うのがこの通学合宿です。毎年泣いてしまう子もいるとのこと。

通学合宿の意義・目的は?

では、何のために行われるのでしょうか…。子供たちはもちろん、親や活動を支える大人達にとってもメリットがあると言われています。

子供たちにとっては

〇 家事などの生活技能が向上する
〇 規則正しい生活習慣が身につく
〇 自主性や協調性、社会性が身につく
〇 自己肯定感を感じられる

親(保護者)にとっては

〇 子離れを体験する機会になる
〇 「我が家の家庭教育を見直す」機会になる
〇  子供の大切さや子供と地域とのつながりを考える機会になる

活動を支える大人にとっては

〇 子供たちとの触れ合いや、地域住民との交流の場となる
〇 地域ぐるみで子供を育てようという機運が高まる
〇 地域住民同士の絆が深まり、協働・共存意識が高なる

このように、先ほどの繰り返しになりますが、

子どもを核としたぬくもりある地域コミュニティの再生を図ることも目的としている。

引用:長崎県庁HP「通学合宿とは

というわけです。

分かりやすく言うと、地域の大人たちが「地域の子供は地域で育てるんだ!」という共通ビジョンを持ち、子ども達のすこやかな育成のために互いに協力し、絆を深めることで「価値観の多様化にともない希薄になりつつある地域コミュニティーの再生を図る」という意図があります。

しかし、実際のところ、価値観も家族構成も生活スタイルも多様になっている現在において、

皆の気持ちを1つにするのは、難しくなっている

と苦悩する声がしばし聞かれます(私のところも一番の課題はこれ)。

通学合宿のはじまりは?全国的にあるの?

さて「通学合宿」は、いつどこで始まったかというと、

通学合宿のはじまりは、昭和58年に福岡県庄内町で始まった「通学キャンプ」、もしくは、それより2~3年前に実施された静岡県の「仲よし学校」と言われています。

引用:におねっと「通学合宿」

とあります。へえ、という感じですが。たしかに「通学合宿 福岡県」「通学合宿 静岡県」で検索している人が多く見られることから考えても、この2県は実施している市町村が多いのかなと予想します。

かなり古い資料に遡ると、H14「地域における通学合宿活動の実態に関する調査研究p.7」では、

平成13年度に通学合宿を実施(予定)すると回答のあった市区町村は、回答の得られた1,858のうち、231(12%)の市区町村です。

引用元:H14「地域における通学合宿活動の実態に関する調査研究p.7」

だそうです。こう見ると、全国的には珍しい取り組みだと分かります。

インターネットには、福岡県、静岡県、千葉県の市町村での実施報告がよく上がっていますが、その他全国の色々な市町村で行われています。そして、今現在(令和元年)、実施市町村の数はどうなっているのでしょうか。正確な数は確認できていません。

ただ、H26年度北海道教育委員会 北海道「通学合宿」ガイドブックp.3によると、

通学合宿の広がりは、全国的な傾向になっています。例えば、福岡県では、平成22年度に実施市町村が85%に達しており、また、奈良県(平成22年度から実施)や静岡県(平成18年度から実施)等のように、県教育委員会が「通学合宿」の取組を推進している事例もあり、それらの県では、実施団体数や事業数が大幅に拡大しています。

引用元:H26年度北海道教育委員会 北海道「通学合宿」ガイドブックp.3に

とあり、北海道では初年度H13年は2例からH25年度は52例と数は着実に増加しています(H23~25の3年間、通学合宿モデル事業を実施してきた背景もあり)。そして、(千葉)君津市秋元小、最後の「通学合宿」もらい湯もとあるように、小学校の統廃合や、協力者不足などの諸事情で廃止になった地域もあります。

「もらい湯」を体験する地域も

「もらい湯」とは?目的と実施にあたっての問題点など

通学合宿の特徴的な活動に「もらい湯」があります。いったい何かと言うと、他人の家のお風呂に入れてもらうことです。

通学合宿が行われる公民館や地域のコミュニティーセンターにはお風呂の施設がない場合がほとんど。それで近隣住民のお家に行って、「お風呂を借りる」とともに「地域の方と触れ合う」「マナーをもってふるまう」「お礼の気持ちを伝える」といった体験を目指します。

この「もらい湯」ですが当然のごとく、お風呂の提供者いて初めて実施可能です。ただ、地域によっては、

家のお風呂を貸してくれる人が、なかなか見つからない

宿泊場所から「もらい湯」提供者の家までの、送迎支援者がいない

といった問題があります。送迎なんてただ送り迎えするだけでしょ!思うかもしれませんが、細かい問題を言うと、

・「もらい湯」提供者宅の数だけ送迎者が必要
・地元の道に詳しい人じゃないと送迎で迷う(狭い道も多い)
・しかも他人の子供を送迎するのに不安を感じる人もいる(暗いし)
・子ども達がお風呂に入っている時間はどこに待機するか

など調整がなかなか大変です。

お風呂はどうするか⁈【我が子の地区の場合】

我が子の地区の通学合宿は、通常「4泊5日」で行われますが、そのうち1日だけ「もらい湯」です。というのも、他の3日は、近隣の温泉施設を利用する事になっていますが、

この1日だけの「もらい湯」でも「提供者がなかなか集まらない」「送迎者が集まらない」という問題を抱えています。

現状取りうる対策はこちら↓↓

①参加者の保護者に呼び掛ける
②もらい湯と温泉施設を併用する(参加者の住み分け)
③もらい湯をやめて全日程、温泉施設を利用する
④自宅で入浴を済ませて来る

④については、初日に「もらい湯」を設定しているので、「もらい湯」が実施不可能な場合は子供たちは家でお風呂を済ませて来ることになります。

これまではギリギリで協力者が確保できており、「もらい湯」がなくなった事はありません。とはいえ、毎年担当者が直前まで慌てふためいている様子を目の当たりにし、「何とか対策出来ないものか」と感じます。

「通学合宿」に関わった人の感想は?効果は?

「通学合宿 感想」

でネット検索してもらうと、全国各地区の事例がたくさん出てきますのでチェックしてみて下さい(pdfファイルで公開されているものが参考になります)。

私がいくつかの資料を見て感じたことは、

・活動内容
・関わった人
・取り組み方
・広報
・前年度のフォードバッグが活かせたか

など、いろいろな要因によって、感想、目的の達成度、効果などが違う印象です。

子供たちは「楽しかった」「成長できた」の声が多い【我が子の地区の場合】

我が子の地区の感想を例に載せます(取組の具体内容は省略)

【子供たち】
〇 友だちや地域の人と仲良くなれた
〇 料理を作るのが難しかった
〇 家に帰ったら通学合宿で学んだ事を生かして、お手伝いを積極的にしようと思った
〇 時間がバタバタで忙しかったけど、とても充実していた
〇 また来年も参加したいと思った

【協力者の声】(料理や掃除のお手伝いなど)
〇 校区の子供たちと触れ合う機会が持ててよかった
〇 子供たちが頑張っている姿が見れて嬉しかった
〇 はじめは緊張していた子供たちが、だんだん笑顔になっていったので良かった

今後に向けて想うこと

我が子が参加したことで今回はじめて「通学合宿」についてよく考えたわけですが、今後の在り方について自分なりに想うことをまとめます(個人の感想)。

「通学合宿」の理念はある程度わかったが、効果のほどは?

「通学合宿」についてどうだったか、通学合宿後の運営本部からのお知らせは「活動内容(目的、日程)」「子どもたちの感想の抜粋」ぐらいなので、実態はよく分からなかったというのが本当のところ。ただ、子供たちや関係者の声を聞く限り、

・子供たちの育成
・地域コミュニティー作り

において意味があったと言えそうです。

とはいえ、実際どれぐらい効果があるのかな?

が気になるところ。北海道教育委員会がおこなった通学合宿モデル事業では、IKR評定を活用した効果測定が行われており、具体的にその効果が数値化されているのでとても参考になります。

「IKR評定って何?」と疑問に思った方のために説明すると、IKR評定のIKRというのは、IKiRu(生きる)という意味です。学校教育において「生きる力の育成」が叫ばれて久しいですね。IKR測定とはその「生きる力」を測定するために開発されたもの↓↓


引用:国立青少年教育振興機構、事業評価に使える!「生きる力」の測定・分析ツール「I.アンケート調査に関するQ&A」

北海道の例では、この28項目からなる簡易アンケートを通学合宿の前後で行っていますが、おおむね上昇傾向でした。
…というように、効果が数値化して示されれば、

通学合宿は意味があるんだなー

と実感できるかと。対象者は小4以上を想定した項目数も少ない簡単なアンケートなので、自身の校区でも取り入れたらいいのになと感じました。数値化できるものを取り入れて、客観的な視点から「効果測定をする」「事業成果を具体的に示す」ことは、今後の通学合宿をブラッシュアップさせるためにも、協力者を増やすためにも必要だと感じます。

効果的なツールを使って、積極的に情報開示する意味

玄海教育テレビ「玄海教育テレビ」(通学合宿の様子を動画でくわしく見ることができます)

この動画、通学合宿の良さがものすごく伝わってきませんか。情報発信ツールも多様に増えましたが、動画の情報量は、テキストや写真だけの場合の5000倍と言われます。広報において使わない手はないです(ちなみに我が地区では、運営スタッフに対してA4文書での感想の共有はありましたが、それ以外は何もありませんでした)。

積極的にネットで情報発信している自治体も増えています。

千葉県教育委員会「通学合宿」

静岡県公式ホームページふじのくに「地域における通学合宿推進事業」

実施報告やノウハウのネット公開は、新たな賛同者を増やすきっかけになるだけでなく、今携わっている人がいつでもどこでも振り返りができるという利点もあります。

さらに積極的な情報発信は、以下の点でも重要だと考えます↓↓

「①通学合宿」支援に時間を使ってもらうため

個人の時間の使い方も、多種多様な選択肢から自由に選べる時代です。そんな中、「通学合宿」の支援者をあつめたいなら、個人の貴重な時間を費やすだけの「意義」「理由」を一生懸命伝えなければ響かない。

②履歴として残る、公開される事で大人もやりがいを実感

通学合宿の目的は、子供達の健全な成長が第一ですが、関わった大人にとっても「やって良かったな」と心から思えることが大切。

子ども達の成長した姿や、楽しかったという感想からもちろん実感できます。それに加えて、「外部に対して目に見えるカタチで公開される、歴史として残る」ことは、「子ども達のために役に立つことしたわ!」「地域貢献したぞ!」と自分を肯定しやすく、イキイキと生涯活動をおこなう意欲につながるのではないかと。

③ノウハウを持った、新たな賛同者を獲得する

地域住民や行政関係者だけでなく、民間のノウハウを持った企業・団体など「発信すれば発信するほど、輪は広がります

我が地区では、近隣の温泉施設(民間)が協力してくれることで、子供たちは安心して入浴が可能になっていますが、他にも、「料理指導をしてくれる団体」「レクレーション活動の指導サポートをしてくれる団体」など活動の魅力が伝われば、
協力したいと思う人の輪は垣根を越えてどんどん広がる
のではないかと思いました。

まとめ

以上、「通学合宿」について調べたこと、思ったことをまとめてみました。

わたしが強く感じたことは、「通学合宿」を実施し意義のあるものにするには「地域の子供は地域で育てる!」という、大人の本気が何より求められているのではないかという点です。

そして、自分自身はこれまで知識と経験がなかったので一保護者としてお世話になるばかりでしたが、今後は何らかのカタチで支援・お手伝いをしていきたいと強く思いました。

最後までお読みいただきありがとうございました。

  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!
目次