「令和」という元号が、福岡県太宰府市とゆかりがあることを知っていますか?
新しい元号になった2019年、私も気になって調べてみました。すると、『万葉集』に出てくる「梅花の宴(ばいかのえん)」が、太宰府で開かれていたというではありませんか。
「それなら、子どもたちと実際に行ってみよう!」ということで、2020年2月に訪れたのが、大宰府政庁跡・坂本八幡宮・大宰府展示館の3か所です。
広い史跡を歩いたり、万葉集の歌碑を読んだり、展示館では娘が「社会の資料集で見たことがある!」と反応したり。教科書の中の歴史が少し身近になった、わが家の旅をご紹介します。
※写真と親子の体験は2020年2月当時のものです。 観光情報・展示館の料金などは2026年10月時点の公式情報を確認して補足しています。
どうして太宰府が「令和」ゆかりの地なの?
令和の典拠となったのは、日本最古の歌集『万葉集』に収められた「梅花の歌三十二首」の序文です。
その中の「初春の令月にして、気淑く風和ぎ」という一節から、「令」と「和」の文字が選ばれました。
この歌会「梅花の宴」が開かれたのは、奈良時代の730年。当時、大宰府の長官だった歌人・大伴旅人(おおとものたびと)の邸宅に人々が集まり、梅の花を題材に歌を詠んだと伝えられています。
つまり「令和」と太宰府のつながりは、新元号が決まって急に生まれたものではなく、約1300年前の文学にあるんですね。太宰府市公式|梅花の宴
「梅花の宴」をきっかけに万葉集の歌をもう少し知りたくなったら、『親子で読み継ぐ万葉集』も候補に。歌に込められた気持ちを親子で味わいながら読むと、太宰府で見た景色がまた違って感じられるかもしれません。
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では、この舞台となった古代の大宰府を、親子で歩いてみます。
① 大宰府政庁跡|大昔の役所が、こんなに広い公園に!
最初に向かったのは大宰府政庁跡(だざいふせいちょうあと)です。かつて九州の政治や外交などを担っていた「大宰府」の役所があった場所で、今は広々とした史跡公園になっています。
目の前に広がったのは、思った以上に開放的な芝生と、背後の山並み。奈良・平安時代の役所と聞いて、もっと堅い場所を想像していた私には、ちょっと意外でした。

当日はボール遊びや凧揚げを楽しむ家族連れの姿もあり、娘からは「広くて気持ちいいー」という声。確かに、ここだけ見ると大きな公園のようです。
地面に残った礎石から、建物の大きさを想像する
でも、足元に目を向けると、ところどころに建物の柱を支えていた礎石(そせき)が残っています。
建物自体は残っていないのに、石の位置を見ていると「ここに柱があって、向こうまで大きな建物が続いていたのかな」と想像できます。

近くで見ると、石がまた大きい!

敷地内では「都督府古跡」と刻まれた石碑も見つけました。

何も建っていないからこそ、「昔はどんな景色だったんだろう」と思いを巡らせられるのかもしれません。子どもと一緒に歩きながら、その場所にあった建物を想像するのも楽しい時間でした。
大宰府政庁跡は国の特別史跡。今では史跡を3Dで再現できるアプリも公式に紹介されています。詳しくは太宰府市公式|大宰府政庁跡をご覧ください。
② 坂本八幡宮|「令和」ゆかりの神社へ歩いてみる
次は、政庁跡から北西側へ少し歩いたところにある坂本八幡宮(さかもとはちまんぐう)へ。大きな観光施設とは違う、地域に親しまれてきた小さな神社です。
大伴旅人の邸宅があった場所は、実は正確には分かっていません。坂本八幡宮の周辺は、その候補地の一つと考えられています。「梅花の宴がこの神社で開かれた」と断定しないところは、歴史を知るうえで大切ですね。
私たちが訪れたのは、新元号の話題がまだ新鮮だった2020年2月の日曜日。参拝者はいましたが、私たちは長い行列に並ぶことなく境内を歩けました。


「がらんさま」って何?子どもの質問で足が止まる
境内で見つけたのが、「がらんさま」と呼ばれる石。
息子も「がらんさまって?」と気になった様子です。
昔、このあたりには寺院があったとされ、「がらんさま」はその寺院に関係する石だと紹介されていました。目立たない石にも、土地の歴史が残っているんですね。

万葉集の歌碑を読むと、昔の人もぐっと近くなる
境内には、大伴旅人の歌が刻まれた歌碑もありました。

原稿を改めて読み返しながら思ったのは、万葉集って難しい言葉ばかりに見えても、その中身には季節の喜びや寂しさといった気持ちが詠まれていること。
歌の意味を一字一句覚えなくても、「昔の人も花を見たり、誰かを思ったりしていたんだね」と話せるだけで、少し距離が縮まる気がします。
万葉集に興味が湧いてきたら、『まんがで読む 万葉集・古今和歌集・新古今和歌集』のような学習まんがから入るのも一つの方法。難しそうに感じる古典も、物語や人物の背景を知るとぐっと読みやすくなりそうです。
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「令和」の石碑と、梅の花
もちろん、この時期の坂本八幡宮で目に入ったのは「令和」の文字。記念の石碑も建てられていました。

境内の梅もきれいに咲いていました。まさに「梅花の宴」のお話を思い浮かべるのにぴったりの景色。

坂本八幡宮の歴史や社務所の奉務日については、太宰府市公式|坂本八幡宮で確認できます。
③ 大宰府展示館|娘が「社会の資料集で見た!」と反応
最後は大宰府政庁跡の近くに戻り、大宰府展示館へ向かいました。
その途中、子どもたちはちょっとした抜け道のような場所を発見。これが思いのほか気に入ったようで、何度も行ったり来たりしていました(笑)。

展示館は、大宰府政庁跡の発掘で見つかった遺構や、古代の大宰府の歴史を紹介する施設です。

「梅花の宴」のジオラマで、令和の由来が見えてきた
入って印象に残ったのが、大伴旅人の邸宅で開かれた「梅花の宴」を再現したジオラマ。色とりどりの衣装を身に付けた人形が、当時の集まりを分かりやすく伝えてくれます。
ここで娘が一言。
「社会の資料集で見たことがある!」
そうそう、これこれ!学校で見たものが実際の展示として目の前にあると、急に身近に感じるんですよね。子どもの方が先に気づいてくれるのも、こういう旅の楽しいところです。
ほかにも大宰府政庁を再現した模型があり、「さっき歩いていた広い場所には、昔こんな建物が建っていたんだ」と、政庁跡で見た礎石とつながりました。
展示館で「社会の資料集で見た!」と気づいたことから、ほかの時代の歴史にも興味が広がるかもしれません。『学習まんが はじめての日本の歴史3 朝廷と摂関政治』は平安時代のお話。今回の政庁跡に関わる奈良時代とは時代が違いますが、太宰府と縁の深い菅原道真の時代を知るきっかけになる一冊です。
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なお、館内の展示写真は掲載していません。 大宰府展示館では、個人の非営利撮影と刊行物等への写真掲載・利用を区別し、後者には申請手続きを案内しています。ジオラマは太宰府市公式「梅花の宴」にも写真が掲載されています。
外にも発見が。歌や短歌の投函ポストと歌碑
展示館のそばでは、俳句や短歌を投函するポストを見つけました。太宰府らしい仕掛けですね。訪問当時のもので、現在の募集や投函方法は現地でご確認ください。

すぐ近くには万葉歌碑も。奈良の都を思う小野老(おののおゆ)の歌が紹介されていました。

「あをによし」という枕詞を見て、私は学生時代の国語の授業を思い出しました。子どもたちは新鮮に見ているのに、親はどこか懐かしい。こんな違いも面白いものです。
子どもと3か所を巡るなら|アクセス・料金・歩き方
3か所は比較的近い場所にまとまっているので、私たちのように大宰府政庁跡 → 坂本八幡宮 → 大宰府展示館の順に歩くと、屋外と屋内の両方を楽しめます。
- 大宰府政庁跡:福岡県太宰府市観世音寺4丁目6-1。広い史跡公園。西鉄「都府楼前」駅から徒歩約15分。
- 坂本八幡宮:福岡県太宰府市坂本3丁目14番23号。政庁跡から北西へ少し歩いた場所。社務所の奉務日は土・日・祝日の10時~16時が目安(荒天等で変更あり)。
- 大宰府展示館:福岡県太宰府市観世音寺4丁目6-1。9時~16時30分。月曜日(祝日等の場合は翌日)と年末年始は休館。
2026年4月からの大宰府展示館の入館料:太宰府市外の一般400円、市内在住・通勤・通学の一般200円。高校生・大学生は市外200円、市内等100円。小学生・中学生は無料です。最新情報は太宰府市公式|大宰府展示館でご確認ください。
車で行く場合は、駐車場や周辺道路の状況が時期によって変わります。私たちが訪れた2020年2月には神社周辺で駐車場の整備工事が行われていましたが、今の状況を示すものではありません。政庁跡の周辺を歩いて巡るつもりで計画すると、細い道を車で移動する負担も減らせそうです。
屋外は広く、坂本八幡宮まで歩くので、歩きやすい靴が便利。梅の季節はもちろん、日差しの強い時期には飲み物も用意しておきたいですね。
まとめ|「令和」が生まれた物語を、親子で歩いて確かめる旅
今回歩いたのは、観光客でにぎわう太宰府天満宮とは少し違う、古代の太宰府を感じられる場所でした。
政庁跡では「昔の役所ってこんなに大きかったのかな」と想像し、坂本八幡宮では梅や歌碑を見つめ、展示館では娘が資料集の記憶と目の前の展示を結びつけてくれました。
「令和」の二文字の裏に、こんなに長い物語があるとは。訪れる前より、元号も万葉集も少し親しみ深くなった気がします。
教科書で習ったことを、旅先の景色の中で見つける。立派な勉強の予定を立てなくても、そんな小さな発見を一緒に楽しめるのが、わが家の好きな「旅育」の形です。
福岡の親子旅なら、宗像大社を巡った記事や、宮地嶽神社の「光の道」と大しめ縄の記事もあわせてどうぞ。
